パーテーション選定の際、カタログに並ぶ「D-40」「Rw-35」といった数値の意味を正しく説明できるでしょうか。防音性能の見方を誤ると、設置後に「思ったより音が漏れる」というクレームにつながりかねません。本記事では業界担当者向けに、D値や遮音等級の読み解き方から用途別・素材別の選定基準まで、実務で使える形で整理しました。
防音性能の見方【結論】D値と遮音等級で判断する

結論から述べると、防音性能の見方の軸になるのはD値(遮音等級)です。カタログの音響スペックはメーカーごとに表記が異なることもありますが、D値を基準にすれば横並びで比較できます。ここではD値の定義から実際の数値の読み方、混同しやすいdB表記との違いまで整理します。
D値とは何か
D値とは、JIS規格に基づいて測定される「室間音圧レベル差」を等級化した数値で、隣室との間でどれだけ音が遮断されているかを示す指標です。D-40やD-50のように表記され、数字が大きいほど遮音性能が高いことを意味します。
パーテーション業界では、間仕切り壁や可動間仕切りの性能表記としてこのD値が広く使われています。発注者や設計担当者と会話する際、まずこの値を共通言語として押さえておくと、仕様のすり合わせがスムーズになります。単に「防音」と言っても程度に幅があるため、D値という物差しを持つことが選定の第一歩です。
D値の数値が示す遮音レベルの意味
D値の数値は10刻みで区分されることが一般的で、D-30程度では話し声の内容がある程度聞き取れるレベル、D-45前後になると大声でなければ内容がわかりにくいレベルとされています。D-50を超えると、通常の会話音はほぼ気にならない水準まで遮音されます。
ただし数値はあくまで実験室条件での測定値であることに注意が必要です。実際の施工現場では隙間や取り合い部分の影響を受けるため、カタログのD値どおりの性能が必ず出るとは限りません。この点は後述する「注意点」の章でも詳しく触れます。数値を絶対視せず、目安として扱う姿勢が求められます。
dB(デシベル)表記とD値の違い
dB(デシベル)は音の大きさそのものを表す単位で、日常会話は60dB前後、電車内の騒音は80dB程度とされています。一方D値は「音がどれだけ減衰したか」という差分を等級化した値であり、両者は測定対象が異なります。
カタログによっては透過損失(Tl値)としてdBで表記される場合もあり、D値との単純な数値比較はできません。防音性能の見方を正しくするには、まず表記がD値なのか透過損失なのかを見極めることが欠かせません。混同したまま比較すると、実際の性能差を見誤るおそれがあります。
防音性能の見方を理解すべき理由

なぜ今、防音性能の見方を正しく理解する必要があるのでしょうか。オフィス環境の変化と、用語の混同によるミスマッチ、そしてカタログスペックの限界という3つの背景があります。順に見ていきましょう。
オフィスで音トラブルが増えている背景
近年、オープンオフィス化やWeb会議の常態化により、オフィス内の音環境に関するトラブル相談が増えています。電話ブースからの声漏れや、会議室での機密情報の漏洩リスクなど、以前は問題視されなかった音の課題が顕在化しています。
働き方改革でフリーアドレスや対面商談の場が増えたことも、音のトラブルを複雑にしている要因です。こうした背景から、施主側も「防音性能」という言葉に敏感になり、施工会社に対して具体的な数値での説明を求めるケースが増えています。担当者としては、感覚的な説明ではなく、根拠のある数値で応じられる準備が必要です。
「防音」「遮音」「吸音」を混同すると選定を誤る理由
「防音」は音を抑える取り組み全般を指す包括的な言葉で、その中に「遮音」と「吸音」という異なる技術要素が含まれます。遮音は音を跳ね返して伝わりにくくする性質、吸音は音を吸収して反響を減らす性質です。
この違いを理解していないと、吸音材だけを使って「防音対策をした」と説明してしまい、隣室への音漏れという遮音性能の課題が解決されないまま放置される事態になりかねません。用途に応じて遮音と吸音を使い分ける、あるいは組み合わせる発想がなければ、期待した効果は得られません。
カタログスペックだけで判断できない理由
メーカーが公表するD値やTl値は、実験室という理想的な条件下で測定されたものです。実際の施工現場では壁との取り合い、天井裏の隙間、ドアの気密性など、数値化しにくい要素が性能に影響します。
そのためカタログ値をそのまま最終性能として提示すると、施工後に「聞こえ方が違う」という指摘を受けるリスクがあります。防音性能の見方としては、カタログ値を出発点としつつ、現場条件を踏まえた補正的な視点を持つことが実務上欠かせません。
D値・遮音等級の具体的な見方

ここからは、D値と遮音等級をより実践的に読み解くための知識を整理します。数値の一覧、音の種類ごとの聞こえ方、そして測定方法の基礎という3つの角度から確認していきましょう。
D値ごとの遮音レベルの目安一覧
D値と実際の聞こえ方の対応関係は、次のように整理できます。
| D値 | 遮音レベルの目安 |
|---|---|
| D-30 | 話し声の内容がほぼ聞き取れる |
| D-35 | 大声の内容は聞き取れる |
| D-40 | 通常の会話がやや聞こえる |
| D-45 | 大声でなければ内容がわかりにくい |
| D-50 | 通常会話はほとんど気にならない |
| D-55以上 | 高い機密性が求められる会議室向け |
この目安は業界内で広く参照される水準であり、用途に応じたD値選定の出発点になります。ただし前述の通り実測値ではないため、絶対的な保証値として扱わないよう留意が必要です。
会話音・物音・機械音での聞こえ方の違い
同じD値であっても、音の種類によって聞こえ方の印象は変わります。会話音は中高音域が中心のため比較的遮音しやすい一方、キーボードのタイピング音やドアの開閉音といった低音域を含む物音は壁を透過しやすい傾向があります。
空調機器やプロジェクターのファン音のような機械音は連続的な低周波を含むため、D値上は同等でも体感的に気になりやすいケースがあります。防音性能の見方を検討する際は、対象空間でどのような音が主に発生するかを想定し、その音質特性に合った素材選定を行うことが重要です。
JIS規格に基づく測定方法の基礎知識
D値の測定は、JIS A 1417などの規格に基づき、音源室で発生させた音と受音室で測定した音の差から算出されます。実験室では標準化された条件で測定されますが、現場測定では周辺環境の影響を受けるため、同じ壁でも数値に差が出ることがあります。
発注者から「どのような測定条件か」と問われた際に、実験室測定値なのか現場測定値なのかを説明できると、信頼性のある提案につながります。規格の詳細は日本規格協会の公開情報も参考にできます。
用途別に見る防音性能の目安

オフィス内の空間は用途によって求められる防音性能が異なります。会議室、電話ブース、オープンオフィスの間仕切りという代表的な3つの用途について、目安となるD値の考え方を見ていきます。
会議室・役員室に必要な防音性能
経営会議や人事に関わる機密性の高い会議が行われる役員室では、D-45からD-50程度の遮音性能が目安とされます。廊下を歩く社員に会話内容が漏れ聞こえるような環境では、安心して議論ができません。
一般的な打ち合わせスペースであればD-40前後でも実用上問題ないケースが多いものの、扱う情報の機密度に応じてグレードを引き上げる判断が求められます。用途と性能のバランスを踏まえた提案が、担当者としての腕の見せどころです。
電話ブース・Web会議スペースに必要な防音性能
近年需要が急増している1人用の電話ブースやWeb会議ブースでは、D-35からD-40程度が一つの目安とされています。周囲のオフィス空間に声が響きすぎないようにしつつ、圧迫感のない小型ブースという制約の中で性能を確保する必要があります。
ブースは天井まで届かない可動式のものも多く、上部からの音漏れが課題になりやすい点が特徴です。壁面のD値だけでなく、天井部分の遮音処理も含めて総合的に性能を評価する視点が欠かせません。
オープンオフィスの間仕切りに必要な防音性能
フリーアドレスや部門間の緩やかな間仕切りとして使われるローパーテーションの場合、完全な遮音よりも音の拡散や反響を抑える吸音性能の比重が高くなります。D値でいえばD-25からD-35程度の軽量な仕切りが選ばれる傾向です。
この用途では遮音等級の高さよりも、開放感を保ちながら音のざわつきを和らげる吸音材との組み合わせが重視されます。空間の目的に応じて、遮音重視か吸音重視かを切り替える判断力が求められる場面です。
パーテーション素材別に見る防音性能の違い

パーテーションは素材によって遮音性能の特性が大きく変わります。スチール、ガラス、木製、そして吸音パネルとの併用について、それぞれの特徴を整理します。
スチールパーテーションの遮音性能
スチールパーテーションは芯材にグラスウールなどの吸音材を挟んだ構造が一般的で、D-40からD-50程度の遮音性能を持つ製品が多く流通しています。金属パネルは密度が高く、中高音域の遮音に強みがあります。
重量があるため設置荷重や床への負担を考慮する必要があるものの、会議室や役員室など高い遮音性能が求められる空間では標準的な選択肢となっています。表面仕上げのバリエーションも豊富で、意匠性と性能を両立しやすい点も評価されています。
ガラスパーテーションの遮音性能
ガラスパーテーションは視認性や開放感を重視した空間づくりに向く一方、単板ガラスの場合はD-30前後にとどまることが多く、遮音性能はやや控えめです。防音性能を高めるには、複層ガラスや異厚ガラスの組み合わせによる合わせガラス構造が有効とされます。
異なる厚みのガラスを組み合わせることで、共振による音漏れを抑える効果が期待できます。デザイン性を保ちながら遮音性能を引き上げたい場合、こうした仕様変更を検討する価値があります。
木製パーテーションの遮音性能
木製パーテーションは温かみのある意匠が好まれる一方、単体での遮音性能はD-30からD-40程度が目安です。木材は軽量なため、内部に吸音材や遮音シートを重ねる複合構造にすることで性能を底上げする設計が一般的です。
木質空間を求めながらも一定の防音性能を確保したい場合、表面材は木製、内部は吸音・遮音材という組み合わせが実務上よく採用されています。素材の見た目だけで性能を判断せず、内部構造まで確認する姿勢が大切です。
吸音パネル併用による性能変化
パーテーション単体の遮音性能に加えて、周辺壁面に吸音パネルを併用すると、室内の反響が抑えられ体感的な聞こえやすさが改善します。吸音パネルはD値そのものを直接引き上げるものではありませんが、会話の明瞭度や騒がしさの印象を和らげる効果があります。
遮音性能だけを追い求めるのではなく、吸音材との組み合わせによって空間全体の音響バランスを整える発想が、実際の使用感を左右します。防音性能の見方として、遮音と吸音の両輪で評価する視点を持っておきましょう。
防音性能を見極める際の注意点

カタログのD値だけを信頼して選定を進めると、施工後に想定外のクレームを招くことがあります。実際の設置環境とのギャップ、隙間の影響、天井や床との取り合いという3つの視点から、見極めの注意点を確認します。
カタログ値と実際の設置環境とのギャップ
カタログに記載されるD値は実験室での測定値であり、実際の建物構造や周辺環境によって現場での聞こえ方は変わります。同じ製品でも、既存壁との接続部分や建物の躯体構造によって、期待した遮音効果が得られない場合があります。
施主に説明する際は、カタログ値を「理論上の上限値」として位置づけ、現場条件によって数値どおりにならない可能性がある旨をあらかじめ伝えておくことが、後のトラブル防止につながります。
隙間・気密性による遮音性能の低下
遮音性能はわずかな隙間の存在によって大きく低下することが知られています。パネルの継ぎ目やドア周りに1ミリ程度の隙間があるだけでも、音は水のようにその隙間から漏れ出してしまいます。
このため、パネル同士の接合部やドアの気密パッキン、床とパネル下部の隙間処理が、カタログ上のD値以上に実際の性能を左右する要因になります。施工品質の確認項目として、隙間の有無を必ずチェックリストに含めておくことをおすすめします。
天井・床との取り合い部分の確認ポイント
パーテーションが天井まで届かない間仕切りの場合、天井裏の空間を伝わって音が回り込む「フランキング伝搬」という現象が起こります。壁自体の遮音性能が高くても、天井裏がつながっていれば効果が大きく損なわれます。
床面についても、フリーアクセスフロアの下を音が伝わるケースがあるため、パネル下部の気密処理や床材との接地状態を確認する必要があります。防音性能の見方として、壁の数値だけでなく上下の取り合い部分まで含めた総合的なチェックが欠かせません。
まとめ

防音性能の見方は、D値という共通の物差しを基準にしつつ、遮音と吸音の違い、用途に応じた必要水準、素材ごとの特性を組み合わせて判断することが大切です。カタログ値はあくまで目安であり、隙間処理や天井・床の取り合いといった施工品質が実際の聞こえ方を左右します。数値と現場条件の両面から見極める視点を持つことで、施主にも納得感のある提案ができるはずです。
防音性能の見方についてよくある質問

-
D値とRw値は同じ意味ですか。
- D値は現場や実験室での室間音圧レベル差を示す等級で、Rw値は建材単体の音響透過損失をもとにした国際的な評価指標です。測定条件が異なるため、単純な数値比較はできません。
-
会議室にはどの程度のD値があれば安心ですか。
- 一般的な打ち合わせであればD-40前後、機密性の高い役員会議ではD-45からD-50程度が目安とされています。扱う情報の重要度に応じて調整してください。
-
ガラスパーテーションでも十分な防音は可能ですか。
- 単板ガラスでは遮音性能に限りがありますが、複層ガラスや異厚ガラスを組み合わせることで、遮音性能を引き上げることが可能です。
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カタログのD値どおりの性能が現場で出ないのはなぜですか。
- カタログ値は実験室での理想条件下の測定値であるためです。現場ではパネルの隙間や天井裏の伝搬経路など、数値化しにくい要因が性能に影響します。
-
吸音材を使えば遮音性能も上がりますか。
- 吸音材は室内の反響を抑える効果があり、体感的な聞こえやすさは改善しますが、隣室への音漏れを防ぐ遮音性能そのものを直接高めるものではありません。両者を組み合わせて検討することが望ましいです。



